思いは記念日にのせて
第二十八話
「なにそれ? 千晴それでいいの?」
研修メンバーのおなじみ四人で集まった週末の夜。
詳しい理由は言えないけど、貴文さんと少し距離をおくことになったことを話した。
だからしばらくはこのメンバーでの集まりには呼べないということを正直に話したら美花さんに問いつめられてしまった。
適当に誤魔化しておけばよかったのかもしれない。
距離をおくうんぬんは隠して、彼は仕事が忙しいから今後も参加は難しいかもとでも言えば納得してもらえたかもしれないし無駄な心配をかけなかったかも。
だけどもしこのままこの期間が長く続いてしまった時のことを考えたら正直に話した方がいいような気がしたんだ。
別に仲たがいをしているわけではないということを強調して伝えると、渋々だけど受け入れてもらえたようだった。
「新プロジェクトが大変みたいだし、そうそう会う時間も取れないからしょうがないよ」
「だってまだつきあいはじめて間もないのに……もう」
「早く終わりのめどが立てばいいけど、高部は何か情報持ってねえの?」
「えっ、あ、うん……」
茅野くんに話を振られた高部くんはなんだか歯切れが悪かった。
最近少しノリもよくない感じ。
真面目な風貌だけど明るく気さくなタイプで、研修の時は積極的に話しかけてくれていたのに。
高部くんも仕事が忙しくて疲れているのかな。それでもこの席に貴文さんがいれば楽しそうに話してはいるんだけど。
「悪い、ちょっと用事思い出したから帰るわ」
生中を半分くらい飲んだ高部くんが立ち上がって財布から千円を出す。それを茅野くんが止めるのも聞かずに出て行ってしまった。
「どうしたんだろう、高部」
「うん……」
残された三人で盛り上がる雰囲気でもなく、すぐに解散することにした。
同じ方向へ帰って行く美花さんと茅野くんもなんとなくよそよそしい感じ。
みんな自分の周りからいなくなってしまったらどうしよう。
なぜかそんな不安が波のように押し寄せてきていた。