思いは記念日にのせて
「この花の絵も子供らしさがにじみ出てて……これは誰が描いたんですか?」
「……これは」
悠真が再び引っ越してきてから思い出したように整理し始めた昔のアルバム。
その中に挟まっていた悠真からもらった絵をスキャンして小さく小話の横に添えた。ここに挟んだことすらすっかり忘れていたんだけど。
さすがに本人が描いたものとも言えず、実際にあったこととも言えなくて口ごもってしまう。
「とっても上手です。マーガレットってわかりますもの。このエピソードの男の子、粋なことしますよねぇ」
出版社側の広報担当の女性がわずかに目を潤ませてテーブルに頬杖をつく。
「粋な、こと?」
意味が分からなくて聞き返すと、担当の女性が軽く首を傾げてわたしを見つめていた。
「え、この話って出水さんが書いたんですよね?」
「え、ええ」
確かにわたしが文章化しましたが?
怪訝そうに目頭に力を込めたその女性は何を言っているのかといった雰囲気を醸し出しながら再び首を大きく傾げた。
「花の日に花言葉を伝えたかったけど、日本では八月にマーガレットが手に入らないから絵にしたんですよね。私の解釈間違ってます?」
お茶淹れかえてきますと担当女性が席を立つ。