思いは記念日にのせて
「なんでわたしなわけ?」
暗にモデルなんてほかにいくらでもいるでしょうという意味を込めて言ってみた。
悠真の願いをよろこんで叶えてくれる女友達はたくさんいるはずだ。
この前本気の相手がいないだけで遊び友達はいっぱいいるようなこと言ってたし、モデルなら無条件でじっと見つめてもらえるはずだ。
「千晴、暇だろ?」
「は?」
「だってあの人とも今ちょっと揉めてるんだろ?」
「揉めてるってか……」
大きなお世話過ぎるんですか?
それに脅迫文を送ってきた人が誰なのか解明されるまで距離を置いているだけであって、それはわたしをこれ以上巻き込まないようにしてくれている貴文さんの優しさだってこともわかっている。
だけど離れてみて、最近ではそんなに寂しさを感じなくなっていた。
最初のうちはメールや電話がなくなったことが悲しくなって布団に包まって静かに涙を流したりもしていた。
だけど貴文さんの仕事が忙しかったのもあって元々そんなに頻繁に会っていたわけでもなく、つきあう期間も短かったのが不幸中の幸いだったのかもしれない。
大学時代の生活に戻っただけ。
今はそう考えるようにしているんだ。
脅迫文を送りつけた人がわかったとして。
貴文さんと元の関係に戻った時、またいちから始めればいいんだと前向きにとらえているから。
ふーん、といまいち納得してなさそうに悠真が首を傾げた。
「とにかく普通に生活している姿を描かせてくれればいい。邪魔はしない。ポーズを取れなんて言わないから」