思いは記念日にのせて
時折そんな悠真の行動を見ると真剣な目つきをしているからなんでだかすごくどきどきしてしまう。
わたしが見ているのに気づくと悠真は無言で顎をしゃくりながら前を向くように指示してくる。
向こうも見られていると気が散るみたいで、なるべくこっちを向くなと言ってくるんだ。勝手だなあ。
「そんなに僕が気になるの?」
「そりゃ見られてれば気になるでしょ?」
「ペットだと思えばいいのに」
「思えるか!」
ソファの肘置きに背中を預け、足を伸ばした状態で雑誌をぱらぱらめくりながら視界の端に悠真の存在を感じている。
ベランダ側のラグの上に座った悠真は相変わらず真剣な眼差しをしているんだろう。
悠真がわたしを好きだった?
それを考えただけで顔が熱くなる。
だってあんなにひどいことをしてきたのに、しかもそれらしいそぶりは全くなかったし。
いや待てよ。あの担当の女性がそう言っただけで実際にはそんな気持ちを込めてはいなかったのかもしれないじゃない。わたしが書いた小話だけでそこまで妄想できる出版社の人ってすごいよ。
……それもこれも悠真からもらった絵をわたしが文章に添付したせいか。