思いは記念日にのせて
 
「え?」

 西園寺さんが机の上に置いた画像は、わたしと悠真が肩を組んでマンションに入っていく姿のもの。
 そして貴文さんのマンションへ一緒に行っていくわたし達の画像の二枚で、日付が手書きで記入されているものだった。
 これを、西園寺さんが?

「ど、うして?」

 声が震える。

「どういう、ことですか?」

 震え続ける声を振り絞って西園寺さんへ問いかける。
 肝心の西園寺さんはぎゅっと目を閉じ、唇を噛みしめながらわずかに俯いてなにも言葉を発してはくれない。

「俺から説明する」

 いいな、と西園寺さんに問いかける貴文さんはまるで大事な人を守るような仕草で優しく彼女の背中を叩いたように見えた。
 ごめんなさいと謝りながらうなずく西園寺さんも貴文さんに頼りきっているようにしか見えない。
 わたしだけ取り残された感じがして、なぜだかひどく息苦しく感じた。

「この日、俺と千晴は会う約束をしていたけど、九州支店の同期が来て飲み会になってしまったのを覚えている?」
「……もちろん」

 忘れもしない、キスの日のこと。
 この日わたしは悠真と飲んで、キスの練習をしたんだ。
 それを思い出してわずかに顔が熱くなるけど、今はそれどころじゃない。

「あの日、あか……西園寺と一緒に帰って来て、千晴の家に向かった」

 西園寺さんを『茜』と呼ぼうとした貴文さんが口ごもったのをわたしは聞き逃さなかった。
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