思いは記念日にのせて
それよりわたしの家に向かったってどういうことだろうか。
なぜか声だけじゃなく身体も震えるのを押さえられなくて、驚きのあまり貴文さんを凝視すると申し訳なさそうな目でわたしを見つめていた。
「西園寺が俺の彼女に会ってみたいって言って、そのうち社内でって言ってたんだけどお互い酔ってて『まあいいか』みたいなノリになって……酔ってては言い訳に過ぎないんだけど、すまない」
ふたりで揃えるようにして頭を下げてくる。
なんて言ったらいいのか、どういう反応を示していいかわからなくて交互にふたりを見た。
「で、この場面に出くわした」
「――それって!」
思わずついて出た自分の声に驚いて慌てて口を噤む。
口出ししないで最後まで聞こうって思っていたのに抑えきれなかった。
「そうだ。俺もこの場面を見た。君が親しそうにほかの男とマンションに入っていく姿を見て、声をかけようと思ったんだ。だけど――」
「私が止めたの!」
急に西園寺さんがカットインしてくる。
ずっと口を閉ざしていたのに今更なにを、と言いたくなってしまうのをぐっと堪えた。
「あなたが一人暮らしをしているって聞いてたから、家に恋人でもない男性を連れ込むなんて最低だと思って……浮気現場をおさえた方がいいって霜田くんを言いくるめて証拠写真を……私が、撮りました。霜田くんの家に入っていくのも……隠し撮りしました」
「……」
頭を下げたまま西園寺さんが声を震わせる。