思いは記念日にのせて
「勘違いだったって霜田くんから聞いて、その画像をあなたに送りつけてしまったことは取り返しがつかなくて……本当にごめんなさい! 霜田くんには幸せになってほしかったの。それなのにって思ったら頭に血が昇っちゃってて……ただの言い訳なんだけど、気づいたらその画像をあなたに……」
「もう、いいです」
自然とその言葉が口から出た。
西園寺さんはきっと貴文さんのことが好きなんだ。
だからわたしが悠真と親しげに歩いていたのが許せなかった。
「こちらこそ誤解を招くようなことをしてすみませんでした」
西園寺さんがはっと息を飲む音が聞こえたけど、わたしも頭を下げていたので彼女がどんな表情をしているのかはわからなかった。
あの日、わたしは練習とはいえ悠真とキスをした。
だから全くの潔白ではない。
それにこのシーンを見せられたら疑うのも無理はないだろう。わたしだって貴文さんと西園寺さんが楽しそうに歩いているシーンや画像を見て同じように思ったからわかる。
「出水さ……」
「千晴、ごめん」
西園寺さんの声と貴文さんの声が混じり合う。
わたしは頭を下げたままふるふると首を横に振った。
「西園寺が投書したのはこのプリントアウトした脅迫文と手書きで日付を記入した画像の件だけだった。間違いない。もちろん一件だからと言って許されるものではない。だけどこの件に関しては俺にも責任がある」
机の上に載っていた画像を貴文さんがファイルに戻す。
ほかのものは別の人がやったってことだ。その事実に生唾がごくりと音を立てて喉元を通り過ぎる。
貴文さんの顔を見ると、別の人物も見つけだしているようで大きくうなずき返された。
もう二度としないと約束してくれた西園寺さんは会議室を出て、その後を貴文さんがついて行く。
わたしはここで待っていてほしいとだけ告げられた。