思いは記念日にのせて

第三十四話

 
 広めの会議室にひとりで残されて急に不安になる。

 もうひとりの別の相手は、手書きで何度も脅迫文を送ってきた人。
 悠真との隠し撮りも正直かなりこたえたけど、どちらかと言えばこの複数の脅迫文も貴文さんと西園寺さんの不貞を知らしめるような画像も精神的にきつかった。

 確かにこの一枚だけはほかのものと画質が違うし、きちんと証拠だと示すように日付と時間がプリントされている。いいカメラで撮ったものなのかもしれない。
 だけどこの画像のことは貴文さんは知らない。もちろん片山課長も。わたしだけが知っている事実。

 背後で会議室の扉が開く音がして、すぐに隠し持っていた貴文さんと西園寺さんの写真を制服のポケットに隠す。
 貴文さんの後に入ってきたのは真顔の片山課長で、その後ろにも誰かの姿が見えた。

「――高部くん」

 なぜ彼が?
 俯き加減で入ってきてはいるけどすぐにわかる。だって同期だし仲良しだもの。
 高部くんの後ろからさらにもう一人入ってきた。
 それはわたしがこの部署に訪問した時怖い形相で睨みつけてきた入口のそばに座っている野島さんだった。
 茶色いストレートの髪のサイドで顔を隠すようにしているけどその表情は不服そうに見える。
 今日は会わなくてラッキーだと思ってたのに、なんでこんなところで……。
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