思いは記念日にのせて
頭の中がふわふわする。
めまいとは違うみたいだけど、身体の中心がぐらついているみたいにまっすぐ立っていられない。
「千晴?」
「……ごめん」
「具合悪いの?」
気づけば悠真の腕に掴まって立位を保っていた。
そこに電車がごおっと音を立てて入ってきて、風力でまたふらつきそうになる。その風から守るように悠真が電車側に背を向け、わたしを前から支えてくれていた。
悠真はこんなことまでできる素敵な大人成長したんだなって気づかされて、うれしいようななんとなくむず痒いような心境になってしまう。
貴文さんのように少し強引に手を引いてくれたのもうれしかったけど、わたしの身の安全を最優先して電車を降りてくれた事実も――
「ちょっと休んでから電車乗るか?」
首を横に振る。
「座れるといいんだけど……あ、あそこ空いてる」
違う、大丈夫。具合悪くない。
「よかった。座れそうだよ」
「悠真、ごめん!」
電車の扉が開く寸前、大声で叫んでいた。
一瞬目を見開いた悠真の顔がすぐに笑顔に変わる。
「なんで謝るの?」
肩を抱かれて電車に乗りこみ、空いている席に座らされた。
わたしの前に立った悠真は吊革に掴まって窓の外をぼんやりと見ている。