思いは記念日にのせて
「悩んでいるから答えが出せないんでしょ? 相手は例の幼馴染の彼なのかな?」
「――え?」
なにを言って……?
たぶん今のわたしは鳩が豆鉄砲を食らったような顔をしているに違いない。
一方片山課長は勝ち誇ったように微笑んでわたしを見つめている。
まるで図星でしょ、と言いたげに見えた。
わたし、悠真のことを考えているから貴文さんについていくと決断することができないの?
そんなはずない、だってわたしが好きなのは貴文さんなんだから。
待って、こんなふうに自問自答するのおかしい。
まるで言い聞かせてるみたいで心が騒めくようだった。
こんな状況なのに、わたしの頭の中に浮かぶのは貴文さんとそして――
「嘘……」
自分の心がわからない。
なんでこんなに心がかき乱されているのかわからない。
このもやもやする気持ちから抜け出すことができるのか、まるで暗いトンネルの中を彷徨っているようだった。