思いは記念日にのせて
11.動き出す思い
第四十話
「ハイ、千晴!」
うちの前にアメリーが立っていた。
片手に紙袋、もう片方の手に大きめのキャリーバッグを持っている。
「どこかへ行くの?」
「ええ、アメリカへ」
「えっ、ずいぶん急な話だね。またすぐ戻ってくるんでしょ?」
「うーん、今度はしばらく戻らないかナ? これ、預かったカラ」
「そうなの?」
アメリーがいなくなる。
話してみれば気さくな人で美人を鼻にもかけず仲良くしてくれた。
そんなアメリーがいなくなってしまうなんて寂しくなってしまうな。
紙袋を手渡され、受け取ると思ったよりもずしりと重かった。
「まだ恋人の……アルに会わせてもらってないのに」
「そうネ。日本に来るって言ってたけど向こうの仕事都合つかなくてネ。また会えるヨ」
アメリーがぎゅっとわたしを抱き寄せる。
ふわりと石鹸のような優しい香りが心地よかった。
ちゅっと頬に口づけされてびっくりしたけどうれしかった。
悲しくて涙が滲んでしまい、それをアメリーが笑いながら掌で拭ってくれる。
「大好きヨ、千晴。またネ」
「わたしも……っ、絶対よ。アメリー」
ばちんとウィンクをするアメリーは本当に魅力的だった。
アメリーの背中が見えなくなるまでわたしは手を振り続けた。