思いは記念日にのせて
「あの子のお父さんね、本当は悠真のこと『はるま』ってつけたかったらしいのよ」
「はる、ま?」
「漢字も父親が決めて……はるまとも読めなくないんだけど、この字なら『ゆうま』がいいって言ったの。それで少し揉めてね、結局は父親の方が折れてくれたんだけど、アメリカに移住してからは『はるま』と呼ばれていたみたい。そこからなのかしらね」
くすくすと楽しげに笑う悠真のお母さん。
ひとりでここに暮らしていた時には絶対に見れなかったと思う。
こうやって笑えているのも悠真の存在があったからだろうな。離れて暮らしていても大事な息子なんだよね。
「もうひとつ理由があるの」
「え?」
「本人から聞いたから間違いないし……言っちゃおうかな?」
悠真のお母さんがいたずらっぽい笑みを浮かべる。
なんだかそれがとってもかわいらしくてついこっちも笑ってしまいそうになった。
「千晴ちゃん、あなたよ」
「わたし?」
「あの子、千晴ちゃんのこと好きだったから……はるちゃんをお嫁さんにするんだってずーっと言ってたのよ。知ってた?」
「……いえ」
「いっちょ前に隠してたのね」
絵を紙袋にしまって返された。
悠真がわたしのことをそんなふうに話していたなんて初耳だし恥ずかしくて穴があったら入りたい。
「私達が喧嘩ばっかりしてたから、本当にかわいそうなことしたと思ってるの。家で心のより所がなくて千晴ちゃんに求めていたのよね」