思いは記念日にのせて

 ――違う。
 わたしは悠真になにもしてあげられなかった。
 自分の身を守るだけで悠真のことをなにも考えてなかったの。

 それでも悠真はわたしのことを好きでいてくれたの?
 
「私達が別れてアメリカに行ってしまう前にね、千晴ちゃんと離れるのが悲しいって泣き出すあの子に言ったの。悠真の運命の赤い糸が千晴ちゃんにつながっていればいつか再び巡り会えるからって。そうしたらあの子うれしそうに笑ってたわ」

 悠真のお母さんが深いため息をつく。
 そしてテーブルの上に乗せていたわたしの手をぎゅっと握りしめた。

「向こうでもずっとあなたを想っていたって。だからHALという名前が気に入っているって……だからお母さんごめんって謝るのよ」
 
 悠真のお母さんが涙を流している。
 それはうれしそうにも苦しそうにも見えた。 
 
 この絵から悠真がわたしに伝えたかったことはこのことだった。
 近くにいてもちょっとしたすれ違いで気づくことができないじゃない。

 離れていても、いつかまた必ず巡り会える。
 だから悠真は去っていく前に言ったんだ。

 ――運命の赤い糸って信じる?
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