思いは記念日にのせて

第四十三話


 それから。
 貴文さんは慌ただしく一度帰国したもののすぐにとんぼ返りする事になった。
 だけどどうしても研修メンバーで見送り会をしたく、なんとか一日だけ開けてもらってひさしぶりに五人集合したんだ。

「えっと、私たち結婚することになりましたぁ」

 いきなりの爆弾発言をしたのは美花さんと茅野くんだった。
 今日は貴文さんのお見送り会のはずなのに、なんだか急にラブラブモード全開なふたりを残りの三人は冷ややかな目で見つめていた。

「ちょ、なにその無関心」
「あーそーなの、おめでとー。じゃ、霜田さんの出発とプロジェクト成功を祝して、かんぱーい!」

 美花さんのツッコミを華麗にスルーした高部くんが乾杯の音頭をとったので、すかさずわたしもそっちに乗る。

「私たちの結婚は祝してくれないの?」

 ぷんぷんと頬を膨らます美花さんもグラスをちゃんとぶつけてくる。
 それを茅野くんが「まあまあ」と宥めるのがふたりの関係性を表しているようでおもしろかった。
 
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