思いは記念日にのせて
休憩時間の終わった広報部の休憩室は案の定誰もいない。
自動販売機でお茶でも出そうと思い、そっちに近づこうとしたらおもむろに西園寺さんが怖い顔でこっちを振り返った。
そこから読みとれる感情は「怒り」のみ。
美人の怒り顔ってさらに怖く感じるんだよね。迫力あるっていうか……。
「出水さん、ひどいじゃない!」
「――は?」
「私……あなたが貴文を幸せにしてくれると思っていたのに……こんなことって」
「え、あの?」
うわっ、西園寺さんが泣き出した。
薄いレースのハンカチをに当てて肩を小さく震わせている。
「ちょ、西園寺さん」
「あなたのこと、認めて彼を託したのに……ひどいわよ」
「あの、ちょっと」
もしかしてわたし達が別れたこと、知らないとか?
どこからどう説明していいんだろうか。
「高木専務の娘が貴文のところへ押し掛けているって知っててあなたは彼のところへ行かないつもり?」
涙で潤んだ瞳でキッと射るような視線を向けられる。
高木専務の娘って、貴文さんがお見合いをした相手のことだ。
もちろん結婚する気はないし、断ったことで貴文さんはアメリカ支社へ行くことになった。もちろん貴文さんも了承の上で。