思いは記念日にのせて
「なんでかなあーよくわからないけど、最初見たときから構いたかったんだよねえ……」
頬杖をついた霜田さんが首を傾げながら上を仰ぎ見た。
ど、どういう意味でしょうか。と聞きたいところだったけどそんなことできやしない。
しかもわたしのことをそんな風に思っていてくれたなんて。
「あーわかった。実家の犬に似てるんだよなあ……出水ちゃんってさ」
「は?」
「あ、その顔そっくり。チワワなんだけどさ、そのこぼれ落ちそうな目とかすっごく似てるんだよね」
どっと笑いがわき起こった。
霜田さんの隣の美人指導者もまるで哀れなものを見るかのような目で吹き出した。
「俺に懐いててめっちゃかわいいんだ」
そして再び頭をわしゃわしゃ……。
犬ですか、そうですか。
わたしががっくり来てることをきっと霜田さんは気づいていない。
今でも頭を撫でながら三人と楽しそうに笑い合っているもの。
恋愛対象として見てもらえるなんて思ってなかったけど、わたしの淡い恋心は行き場を失ったような宙ぶらりん状態になっていたと思う。
写真が趣味だという高部くんがいいカメラを持ってきていてみんなをたくさん撮ってくれた。
中には霜田さんとのツーショットもあると思う。現像が楽しみだな。