思いは記念日にのせて

「早く、行って、行ってください!」
「ほんとに?」
「頑張って、西園寺さん! そうだ、今日って遠距離恋愛の日なんですよ!」
「……そんな日があるのね」

 ふふっと苦笑いを浮かべる西園寺さんは本当に綺麗だと思った。
 お互いに気持ちを残したまま別れたふたりが、もしかして再び心を通わすことができるかもしれない。
 そう思ったら興奮してテンションがあがりまくっていた。

 間に合うのであれば、もう一度――

「もし、フラれて帰ってきたら……慰めてくれる?」
「もちろんです! わたし、待ってます!」
「フラれるのを?」
「ちがっ、うまくいくのをですっ!」

 半泣きになりながら西園寺さんの華奢な背中を思い切り強く押していた。
 西園寺さんも目を潤ませながらⅤサインをわたしに向けて休憩室を飛び出して行く。

 どうかどうか、西園寺さんの思いが貴文さんに届きますように―― 
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