思いは記念日にのせて
第四十五話
仕事始まりから一週間くらいたった頃、家に国際電話がかかってきた。
『あけましておめでとう。霜田です』
電話の主は貴文さんだった。
ひさしぶりに聞く声は穏やかでほっとしたんだけど、思っていた人からじゃなかったから少しだけ落胆している。こんなにも悠真を求めている自分がいるなんて。
『連絡が遅くなってごめん。俺、茜とやり直すことにした』
「えっ!」
『いろいろあったけど……それに君を巻き込んでしまって本当にすまなかった』
いきなりのことで驚きすぎて息をつくのも忘れてしまっていた。
そんなわたしの状況を悟ったのか、くすっと貴文さんが笑う。
そばに西園寺さんがいるようで『ありがとうって伝えて』って声が小さくだけど聞こえてきた。
『君が茜の背中を押してくれたって聞いてうれしかった。ありがとう』
わたしはなにもしていない。
それなのにこんなにもストレートに感謝の言葉を述べる貴文さんの気持ちがうれしくて自然に涙がこぼれていた。