思いは記念日にのせて
第四十六話
その数日後の夜中、携帯がけたたましく鳴った。
暗闇の中、まさぐるように電話を手にして画面表示も確認しないまま出てしまっていた。
「はい……もしもし」
『どういうことだよ!』
安眠妨害された上、出てやったのに開口一番その台詞?
と、思いきやその声に聞き覚えがあることにすぐ気がついた。
「ゆ、ま?」
『ああそうだよ。ちゃんと説明しろよ! なんで貴文が別の女と結婚することになってるんだよ?』
眠気が一気にさめて意識がクリアになる。
まるで冷水をかけられた後のようなしっかりとした目覚めだ。
「はあ? 今、何時だと思ってるの?」
待っていた相手からの電話のはずなのに、なんでこうも腹が立つのか。
日本との時差を考えずにかけてきたことも腹立たしいし、あんなに電話がほしいと言っていたのを完全スルーでいきなりかけてきたと思ったらその内容って? しかも貴文さんを呼び捨てってなれなれしすぎない?
『日本時間なんてわかってる!』
「そういうことじゃない!」
『はあ? なに怒ってるんだよ。怒りたいのはこっちだ』
舌打ちする音が聞こえてさらにむっとしてしまう。