思いは記念日にのせて

『運命の赤い糸って、信じる?』

 質問を質問で返された。
 その途端、あの時の悠真を思い出して涙がぽろぽろと流れ出す。 

「うん、信じるよ」
『そっか、よかった』
「あのねっ、わたしの赤い糸……悠真と繋がっていると思うの」
『えっ?』

 言葉になりきらない驚きのような声が聞こえた。
 少しの間、どちらも言葉を発しない無言の時間が経過する。
 だけど今、気持ちを伝えなければいけないのはわたしなんだ。
 もう一度すうっと深く息を吸い込む。よし。
 
「悠真のこと……好き、だから悠真と繋がってると思いたいの。悠真がくれたあの絵みたいに……遠回りしても、運命の赤い糸で繋がっていればいつか必ず結ばれるって信じたいの。悠真がくれたあの絵はわたしと悠真だって……信じたいから」
 
 だめかな、と尋ねてみると、悠真の小さなため息が携帯越しから伝わってくる。
 全神経が耳に当てた携帯に集まっているかのようだった。
 悠真の答えが、知りたい。
 一語一句、聞き逃したくない。

『――偶然だね』

 ふいに悠真の声が聞こえてきて、なにが、と問おうとした時。

『僕もずっと昔からそう思ってたんだ』

 ふわりとわたしの胸に悠真の言の葉が舞い落ちてきた。
< 190 / 213 >

この作品をシェア

pagetop