思いは記念日にのせて
「本当に?」
『本当だよ』
「ずっとって……」
『ずっとだよ。あの夏の日に描いた花の絵を渡す前から』
うれしいはずなのに涙が止まらない。
『泣いてるんだ』
「……っ、泣いてなんかっ」
『じゃあ、今から母さんに頼んで確認してもらおうかな』
「やめて」
笑いながらも鼻をすすっているからもう隠しようがないだろう。
『僕が帰るまで、待っててくれる?』
「……うん」
『絶対だよ、約束の印に左手の小指にキスして』
「へ?」
『いいから、ほら』
促されるまま左手の小指にそっと唇を触れさせる。
その瞬間無言だった悠真もきっと同じようにしているような気がしたんだ。
電話を切ってから気づいたんだけど、ディスプレイに表示されていた日付は一月二十七日、その日はプロポーズの日だった。