思いは記念日にのせて

「アメリー!」
「なにやってんのヨ! バカァ!」

 いきなりの罵詈雑言と共に抱きしめられた。
 アメリーから優しい甘さのフレグランスの香りがふわりと漂う。

「え、どう……」
「ハ、悠真は日本向かってるんだってバ!」
「……?」
「入れ違いヨ!」
「……えええええええええ?」

 呆れたって顔のアメリーがお手上げポーズをして見せた。
 じゃあなんですか……悠真ももしかしてわたしを驚かそうと同じことを考えていた、とか?

「ハジメマシテ」

 落ち込んでがっくり肩を落としていたわたしの顔をひょいっと覗き込んできた男性がいた。
 透き通ったブルーの瞳に彫刻のように整った顔。
 蜂蜜色の髪は後ろで一本に束ねられ、白いTシャツから覗く腕はむきっと筋肉がせり出していた。
 まさか、ハリウッドスター?

「うっ、」

 思わず綺麗すぎて一歩下がると、アメリーが笑い出した。

「千晴、彼がアル」
「ドモ、アルフォンス デス」

 高い位置からにょきっと手が伸びてくる。
 握手のためにさしのべられただけなんだけど、え……背が二メートル以上ありそうなんですが?
 その手をおずおずと取ると、ぎゅっと適度な力加減で握りしめられた。ニッコリと満足そうに微笑まれるときゅんっとなってしまう。
 うわあ……なんて美しいんだろうか。鼻が高くて彫りが深くて、とっても優しげな表情をしている。
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