思いは記念日にのせて

「どしたノ? 千晴、緊張してル?」
「ちょっと……聞いてたのと違うんですけど?」
「なにがヨ?」
「悠真と背格好が似てるって言ってたでしょ。だから時々悠真を呼び間違えるって」

 一瞬きょとんとしたアメリーが豪快に笑い出した。
 やだ、そんなに大きい声で笑って。注目浴びちゃうじゃない!
 ……と、思いきや誰もこっちなんか見ていなかった。
 日本だったら絶対注目の的になってそうなのに、アメリカ人っておおらかだわ。

「ああ、そんなこと言ってたネ。言ったのはワタシじゃなく悠真だけどネ」
「全然違うじゃない」
「こっちでは悠真のこといつも『ハル』って呼んでたノ。だからつい癖でハルって呼んじゃいそうになってたんだけど日本でハルって呼ぶのはNGだったノ。もちろん千晴にバラしたくないって理由でネ、苦肉の策で『アル』と間違えたって言ってたってワケ。悠真も話を合わせてくれたってコト」

 まだお腹を抱えて笑い続けるアメリー。
 アルもニコニコしながらアメリーの肩を抱いて一緒になって笑っている。
 そんな理由で……なんだか不自然だとは思ってたけど、まさかわざわざ呼び方を変えさせていたとは。
 
「でももう知ってるのよネ? ハルが悠真だってコト。ようやく気が抜けるワ。これでもめちゃくちゃ気を遣ってたんだからネ!」
「ヨカッタネ、アメリー」

 アルの日本語はアメリーよりもカタコト。
 でもちゃんと聞き取ることができるからたいしたもんだと思う。
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