思いは記念日にのせて
第四十八話
再び日本の地に着いたのは五月二十三日、キスの日の夕方だった。
長いフライトを終えたわたしは乗っていただけだけどもう疲労困憊。
緊張もあったし、また離陸の時のぶわーってあがっていく感覚をすぐに味わわないといけないストレスが最高潮だったから。
だけどアメリーとアルが真ん中の席のわたしを挟み、左右で手を握っていてくれたんだよね。正直恥ずかしかったけど心強かったのは事実。
「ついた……」
ようやく見慣れたマンションについて、ほうっと力が抜けた。
実質一日しか離れていなかったんだけど、なんだかとってもひさしぶりな気がする。
悠真はもう、家にいるのかな。
もしかしたら前みたいにふらっとどこかへ出かけているのかもしれない。
わたしがアメリカへ向かったことは知っているかもしれないけど、とんぼ返りしていることは知らないだろうし。
「やっぱり悠真は千晴以外に本気になったりしなかったでしょ?」
アメリーは当てたと言わんばかりの満足そうな表情を見せ、空港で別れた。
とりあえずアルがいろいろ見て回りたいということで、わたしだけ一足先に帰ることになったのだ。