思いは記念日にのせて
「ん……み、ず」
喉がからからでまともに声がでない。
いつの間にか閉じていた瞼を開くと辺りは真っ暗だった。
だけど妙に身体はすっきりしていて、腕を伸ばして身体をよじっても軽く感じる。
「って!」
手に何か当たったと思いきや、悠真の声が部屋に響く。
手のひらに柔らかい髪の毛の感触……あ、これ悠真の頭だったのか。
「んだよ……反応なくなったと思えば寝てるし、諦めて寝れば起こされるのかよ……」
暗闇の中でもそりと大きな影が動く。
まだ目が慣れていないからそう見えるけど、間違いなく悠真の身体だろう。ぶつくさ文句を言いながらのっそりとその影が部屋を出ていく。
ああ、そうだ。
自分のベッドでマッサージしてもらったのは覚えている。だけどそれ以降の記憶がぷっつりと途切れていた。
寝てしまったわたしを後目に悠真も呆れて一緒に寝た……ってところだろうか。
「ほら」
暗い中戻ってきた悠真がミネラルウォーターのペットボトルを渡してくれた。
ちょうど喉が渇いていたから助かる。
冷蔵庫でキンキンに冷えた水はとってもおいしくて全身の細胞に染み渡るようだった。