思いは記念日にのせて
「んー、今何時?」
「三時ちょっとすぎ」
あれ、わたし何時頃から寝ていたんだろう。
とにかく水がおいしくて、一気飲みしてしまっていた。
だんだん暗闇に目が慣れてきて、悠真が水を飲みながら唖然としてこっちを見ているのがわかる。
「ぷはー、おいしい。身体すっきりー!」
「それはよかったなぁ。それより今日は何の日か知ってるか?」
「今日?」
ん? と首を傾げてみる。
「どれだけ寝たかはわからないけどすでに三時だしキスの日は終了してしまっている……よね、だけど一度はできたしまあいいか」
「自己完結しないでくれる?」
「て、ことで五月二十四日……なんだっけ。伊達巻きの日だったか」
「千晴の頭ん中は記念日のことしかないのかよ」
はあっと盛大なため息が聞こえ、悠真ががっくりと肩を落とす。
いきなりベッドライトがつけられ、眩しさのあまり一瞬目がくらんだ。
「これ……」
「今日、出荷される」
差し出されたのは悠真の画集だった。
表紙は以前、貴文さんに見せてもらっていた。
もちろんその時は悠真の画集だって言うことは全く知らなかったんだけど、その時は上半分くらいしか見えなくて鉛筆書きの女性の後ろ姿ってことだけしかわからなかったんだ。