思いは記念日にのせて
改めて表紙のすべてを見る。
描かれた女性は右手で左手首を掴んでいて、その左手の小指からは赤い緩やかな線が背表紙の方に向けて伸びていた。
裏を見てみるとそこにはTシャツにジーパン姿の男性で、同じように後ろ向きで手を組んでいる。
そして表紙の女性の小指から伸びていた赤い糸は裏表紙の男性の左手の薬指に繋がっていた。
「これって……」
男性は足元が雪駄、女性は見覚えのある水玉模様のエプロン。
間違いなく、悠真とわたし。
信じられない気持ちでベッドサイドに腰をかけた悠真を見上げると、ニカッと褒められたあとの子供みたいな満面の笑みになっている。
背表紙を見ると、英語のタイトルがこちらも手書きで記されていた。
【The red string of fate】
運命の赤い糸。このくらいの英語は分かる。
本来表紙に表記されるはずのタイトルは女性の小指の先から裏表紙に向かって伸びる緩やかな赤い線の上に小さく記されていた。
「普通もっとタイトル大きく載せるもんなんじゃないの?」
「絵が台無しになるだろ」
こんなふうにわたしの姿を絵にしてくれるなんて、うれしくて涙が出そうだった。