思いは記念日にのせて
「私のコントロールがよかったからよ」
「ですです」
美花さんがえへんと胸を張る。
受け取ったブーケからはとってもいい香りがする。早く悠真に見せたいな。
「悠真くんもう来るかな?」
「たぶん……」
悠真は今日からうちの会社のそばのギャラリーで個展を開いている。
それを終えてから二次会に参加してくれることになっているのだ。そろそろこっちに到着する頃だと思うんだけど。
悠真の画集は部門一位を常にキープしていて、日本で初めての個展ということでチケットは早々売り切れた。さっきメールをしたけど返事は来ていなかったからきっと大盛況なんだろう。
二次会のお店の前で待ち合わせしたんだけど来てるかな。
と、思いきやお店の入り口の前で女の子と親しそうに話している悠真の姿を発見した。しかもめちゃくちゃ楽しそうに見える。
スーツ姿の悠真の隣に立っている女の子はこっちから見ると後ろ向きなんだけどラフな感じでポロシャツにホットパンツにニーソと、とっても若々しい。
「千晴、あれ」
「うん、悠真」
「えっ、あれが千晴の彼氏? かっこいいじゃん。でも、隣の子……」
茅野くんと高部くんと貴文さんが心配そうな顔でわたしの様子を窺っているのがわかる。
いつものように女の子に声かけられたのかもしれないけど、こんな時までそれにノる悠真も許せない。