思いは記念日にのせて
「みんなが証人ってことで、ここでもう一度言おうかな。運命の赤い糸って――」
「わっ! ちょっ、なっ」
狼狽えるわたしを見るのが心底楽しそうな悠真の笑顔が、一瞬にして真面目なものに変化した。
「――信じる?」
みんなの冷やかしの声が止んで、通り過ぎてゆく人の話し声や足音、車の通過する音が自然に耳に入ってくる。
わたしの胸の奥のほうで、今の悠真の声とあの時の悠真の声が重なり合うように聞こえていた。
「信じてる」
あの時言えなかった言葉を大切に、ゆっくりとうなずきながら答える。
絡められた小指に力を込めると、悠真も同じように返してきた。
背の高い悠真がわたしの顔を覗き込むように近づいてきて、びっくりしつつ目をぱちくりさせていると。
「ずっと好きでした。結婚してください」
こそっと耳元でそう囁かれた。