思いは記念日にのせて
「お酒弱いよね。二日酔いになったりしない?」
「あ、はい……あー」
そうだ。この前熱が出た時、頭痛薬飲み切っちゃったんだっけ。
「ここの薬局で買っていきます」
ちょうどいつも寄っている薬局の横だった。
生理の時もたまに頭痛がするので常備するようにはしていたけどすっかり忘れていた。
いつも買っている薬を棚から取ってレジに向かう。
閉店間際のようですでに入り口の側に置かれている目玉商品の棚は片づけられていた。店内も客はほぼいなくて店員さんが片づけをしている。
「いらっしゃいませ」
「――あ、こんばんは」
レジの店員さんは悠真のお母さんだった。
黒色の髪を一本に束ね、目尻にはくっきりとしわが刻まれている。
確かうちの母親と同い年くらいなのに、ずっと年上に見えるんだよね。
「どうも。ポイントカードお持ちですか?」
事務的な返事をして、笑顔も見せずにレジを進めていく。
こっちはにこやかに挨拶をしたつもりだったのに。
ワンテンポ遅れてポイントカードを出すと、後ろからレジトレーにお金が置かれた。
「えっ」
「これでお願いします」
「いえっ、これはわたしの」
「いいからいいから」
霜田さんと言い合いをしている間に悠真のお母さん、もといレジの人は会計を済ませてお釣りと薬を手渡してきた。
「ありがとうございました」
またも事務的に頭を下げられ、目を逸らされる。
仕事中だからかもしれないけど、いつも以上に素っ気ない態度になんだか少し悲しくなった。