思いは記念日にのせて
「あのレジの人、知り合い?」
薬局を出た後、霜田さんが心配そうな顔でそう尋ねてきた。
「小学校の同級生の母親です」
「そうなんだ。なんか」
「え?」
「いや、なんでもない」
たぶんそんな気がしないって言いたかったんだろうな。
わたしもそう思う。うちの母親だったら仕事中でも自分の子供の同級生がいたらべらべら話しかけると思う。なんていうか、悠真のお母さんはちょっと特殊な感じが昔からしてた。
たわいない話をしながら徒歩十分。
結局家の前まで送ってもらってしまった。
「送ってもらった上に薬まで買わせてしまってすみません。ありがとうございました」
「いえいえ、結構大きいマンションだね。大丈夫? 部屋まで送ろうか?」
マンションを見上げながら霜田さんがそんなことを言うからドキッとしてしまう。
「でもまあ、親御さんに心配されちゃうかな? いきなり男と一緒に帰ってきたんじゃ」
「あ、わたし今ひとり暮らしなんです」
霜田さんが目を丸くした。
父親の転勤に母親もついて行ってすでに半年ひとり暮らしをしていることを話した。早ければあと二年くらいで戻ってくる予定だけどもということも含めて。