思いは記念日にのせて
「海外いいね」
「霜田さんの周りって美人多いのに出水かあ。こういう童顔系がタイプだったのか。あー出水ロリ声だしな」
「なによ、ロリ声って?」
「やめて!」
自分の声の大きさに驚いて手で口を覆ったけど、発してしまった後ではすべてが遅い。
目を丸くした美花さんと茅野くんがわたしを見つめている。
声のこと、言われたくない。
霜田さんと高部くん、そして近くにいたほかの研修の班のメンバーも静まりかえってわたしの方を見ていた。
「冗談だって。本気にしすぎ」
困惑顔で乾いた笑い声をあげた茅野くんがわたしにこそっと小声で囁いた。
「こら、出水ちゃんを困らせるなよ」
「違いますって。ちょっとからかっただけで、なあ」
霜田さんに咎められた茅野くんが美花さんに同意を求めるけど、なんの反応も返さないでわたしをじっと見据えていた。
「ごめんなさい」
あまり話したくなくて、ぼそぼそと口の中で籠もるような声しかあげることができなかった。