思いは記念日にのせて
それから悠真は何度もわたしのことが好きだとからかわれていたけど何も言わずに無視を決め込んでいた。
その頃からわたしと悠真は一緒に登下校するのをやめたんだ。
それに関して悠真はなにも言わなかったし、わたしの方もやめようとは言わなかった。
悪者になりたくなくて、一緒に帰る時離れて歩くようになったから悠真の方が察して離れてくれたんだ。
わたしは卑怯者だ。
自分を守ることだけで精一杯で手を汚さずに悠真を排除した。
クラスメイトのいじめに加担した同罪だ。
それから悠真はひとりきりなことが多かった。
仲のよかった男子も何となく離れていってしまってクラスで孤立してしまった。
クラスの誰からも声をかけられることがなくなっても悠真は普通に学校に来ていた。
六年にあがるときクラス替えがあればよかったのにそれもなかったからきっと辛かったと思う。
それなのにわたしは何もしてあげられなかった。
修学旅行の班を決める時も悠真は誰にも誘われず、先生に「仲間外れはしないように」と言われて比較的おとなしい男子の集まりに入れてもらっていた。
だけど実際旅行中はその班のメンバーからも無視されていたのをわたしは見てしまった。
『デブが移るから近づくなよ』
『デブの汗って臭えんだよ』
そんな心ない言葉をぶつけられても悠真は何も言わなかった。
その光景を見てわたしは思った。
悠真はいつから笑わなくなったんだろうって。