思いは記念日にのせて
修学旅行は晩秋の京都。汗なんかかいてるはずがない。
悠真は厚手のパーカーを着ていたし、白い薄手のマフラーも巻いていた。
絶対暑くなんかない。汗なんて出ない。
これ以上聞きたくなくて、わたしはその男子たちに向かって走っていた。
なんて言えばいいのかわからない。
だけど元はといえばわたしの話し方がきっかけで悠真がこんな目に遭ってるのに何もしないで目をつぶっていたことに我慢の限界が来ていたから。
わたしがすごい形相で目の前に立ったからか悠真をからかっていた男子がわずかにひきだした。
『なんだよ、出水。デブを庇うのか?』
ひとりではなにもできない、クラスでは静かな方の部類の男子も悠真のことを名前で呼ばなくなっていた。
心ないあだ名で悠真をバカにしていることに腹が立つ。
それを知っていたのに今までわたしはなにもしなかった。
きっとこの男子たちも悠真をスケープゴードにしているだけだった。
悠真をいじめていなければやんちゃ男子たちにいじめられる次のターゲットは自分だって必死になっているだけなんだ。
そしてわたしも……だから――
『そういうの……もう、やめよう』
泣きそうになるのを堪えてようやく言ったその言葉。
そのせいでわたしも仲間外れにされるかもしれない。だけどそれでもいいって思った。
悠真もきっとそう思ってわたしを庇ってくれたに違いないから。