思いは記念日にのせて
 
 連れてこられた広報部は高校の一クラスくらいの大きさの部署で、そこに所狭しと机が向かい合わせに並べられている。
 机と机の間の小さなパーテーションで課が区切られているだけみたい。
 どの机の上も本や雑誌で散らかっているし、席に座っている社員は男性が多いようだ。空席も目立つ。それなのになんだか妙に騒がしい。
 
「みんな注目、今年うちの部署に配属された出水千晴さんだ。よろしくな」
「新人、第二課だけなんすね……うちにもほしいっすよ」
「まあまあ、そう言いなさんな。余裕があれば出水さんにも手伝ってもらうから。よろしくね」

 お迎えに来てくれたわたしの直属の上司、片山課長が諫めるように苦笑いをした。
 片山課長は三十代前半位の見た目で鼈甲の眼鏡がインテリっぽい。
 ここにつくまでに緊張しなくていいからとかいろいろ声をかけてくれた。
 少しだけぽっちゃりした感じだけど人柄はよさそう。
 第一課の方は人手不足なのかな……ぼやいた男性社員は無精髭をはやして目の下にはくっきりとした隈が張っている。
 
 向かい合わせに十個くらい並べられた机が二列あって、そのちょうど真ん中辺りの窓際に大きな机がひとつ置かれている。そこが広報部長の席で今は不在のようだ。
 部長だけでなく部署内不在が多く、どの社員も忙しくて自席にいることは少ないと聞いてひるんでしまった。
 だいたいが他部署に行ったり、この部屋の隣にあるガラス張りの壁の向こうのパソコン部屋にいるらしい。

 なんだかとんでもない部署に配属されちゃったみたい……。
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