思いは記念日にのせて
 
 なんとかマンションに着くと、いつもは閉まっている入口の扉が開けっ放しになっていた。
 そこを入ってすぐにエントランスがあって、その先にオートロックのガラスの扉がある。
 そこで認証番号を入れるんだけど、さすがにそこは開いてはいない。

 そういえば外に引っ越し業者の大きいトラックが止まっていたかも。
 こんな時間に引っ越し作業なんだ。
 腕時計を見ると、まだ二十時を少し回ったところだった。思ったよりも遅くない。
 いつも寝るのは二十三時過ぎだからまだまだ時間がある。
 DVDでも借りてくればよかったかな。足のふらつきもだいぶ落ち着いてきたし。
 だけどひさしぶりに飲んだからか眠いし、今日はシャワーだけにして早めに寝ようかな。
 
 イヤでも明日も仕事に行かないといけない。
 辞めることは全く考えてないし、辞めてどうなるものでもない。
 今の部署でやれるだけのことはやらないとは思っている。
 その上で異動願いを出すことも検討すればいい。
 今すぐ退職どうこう結論を出すべきでないことはわかっている。まだなにもやっていないのだから。

 郵便受けを確認するのも面倒で素通りし、止まっていたエレベーターに乗り込む。
 動き出すとそのわずかな揺れと上に上がっていく感覚で一瞬胃の中がせり出しそうになる。
 戻しそうまではいかないけどまずい兆候だ。
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