思いは記念日にのせて

「――っと」
「っ!」

 中から人が飛び出すように出てきて、またのけぞってしまった。
 あまりに驚いて声が出そうになったけど、それはわたしの喉元でひきつれた音になっただけだった。

 その男の人は、わたしが落とした郵便物を拾ってくれた人だった。間違いない。
 この前とは打って変わってTシャツにジーンズ、そして頭にはタオルを巻いている。
 今日はサングラスをしていない。日本人だったんだ。
 丸いアーモンド型の瞳の目尻はわずかに垂れていてかわいらしい感じ。サングラス越しだともっと外国人っぽい印象だったのに。

 あれ、この顔に見覚えがあるような……気がするんだけど。

「千晴?」

 驚いたような表情でわたしを見て名を呼ばれた。
 ありゃ、この前の覚えていたのかな。
 でもなんでこの人が悠真のお母さんの部屋にいるの?

「コンビニ行ってくるから」
「あっ、一緒に行く。日本のコンビニ見てみたい」

 男の人の背後から聞こえてきたその声は悠真のお母さんのものと、もうひとつは若い女の人のもの。
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