思いは記念日にのせて
「あっ、あっ、これっごめんっ、勝手に見ちゃって」
「別にいいよ」
持っていた布を渡して大きく頭を下げるとまだ酔いが完全に醒めていないのかぐらりとした。
「てか、急に意識なくすからびっくりした。大丈夫か?」
両肩を掴まれ、下げていた上半身を起こしあげられると悠真とばっちり視線が合ってしまう。
これが昔ぽっちゃりだった悠真だとは思えないくらいすらっとしていた。
背が高くて筋肉つきすぎてなくて……。
背の低いわたしの顔を覗き込むように傾げられた首のくっきり浮き出た喉仏が妙に艶っぽくてごくりと唾を飲み干してしまっていた。
やだ、わたしなにを意識してるの? 相手は見た目かわったとはいえ悠真だよ?
「千晴?」
「はっ、だっ、大丈夫!」
「よかった。心配させんなよ」
わしゃわしゃっとわりと乱暴な手つきでわたしの頭を撫でる悠真のほっとした笑顔。
ありがたいはずなのになぜかぎゅっと喉元が締めつけられるような息苦しさも感じる。鼻の奥ががつんとして何かがこみ上げてきそうになった。
なんでこんなに泣きたくなるのかわからない。
わたしは悠真に心配してもらえるような人間じゃないのに。
「まあ、とにかくとんだ再会になったけどこれからまたお隣さんだからよろしくな」