思いは記念日にのせて

 ずるずるとカップラーメンをすすりながら昔のアルバムを広げて眺める。
 かわいいけれど少しぽっちゃりした悠真の写真。
 所々入り込むようにして写っていたその姿はいつも寂しそうな表情で、今とは全く別人に思えた。

 テーブルの上に無造作に置いたスマホが震え、見ると美花さんからのメール。
 無事に着いたかの確認だった。その前にも何通か来ていたみたいで全然気づかなかった。
 
「ちゃん、と、つきま、した。きょうは、ごめん、なさい」

 ひとりごちながらその文面を打ち、送信する。
 ひさしぶりに食べたカップラーメンはしょっぱく感じて、麺も少し伸びてしまっていた。
 写真に目を取られて食べるのが遅れたせい。
 
 元気そうな悠真に再び会うことができてよかった。
 そう思う反面、昔のことを思い出して後ろめたい気持ちになる。
 引っ越してきたばかりの頃はあんな無邪気な笑顔をしていた。それこそいつでもニコニコしていて。

 その笑顔を奪ったのはわたしだと思うと未だに胸が痛む。
 それなのに悠真はまた笑顔でわたしを受け入れて、しかも会いたかったとまで言ってくれる。


 嘘だ。
 会いたかったわけがない。
 庇ってくれた悠真を裏切ってひとりぼっちにさせたわたしのことを恨んでいるに違いないのに。

 気づけば涙がポタポタこぼれていた。
 半分も食べることができなかったカップラーメンの匂いが鼻について、涙はすぐに引っ込んだけど。
 
 今日のわたしは散々だった。
 同期に迷惑をかけ、悠真に迷惑をかけ……。

 明日からはちゃんとしなきゃ。
 まず、明日はみんなにちゃんと謝ろう。
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