思いは記念日にのせて
第十六話
「今日デートの予定だったんだけど振られちゃってさ。おふくろいなくってメシどうしようかなって思ってたんだ。ちょうどよかった」
「えっ、アメリーさんに振られたの?」
「は? 君はまさか僕とアメリーがつきあってるとでも思ってたわけ?」
わたしがうなずくと、悠真はひとしきり大声で笑い、いきなり眉間にしわを寄せて目を眇めると「心外だ」とぼそりとこぼした。
あんな美人とつきあってると思われて心外ってどういうことよ。そこは普通喜ぶところなんじゃないかしら?
唇を尖らせてむくれた悠真が荒い鼻息を漏らした。
「アメリーはビジネスパートナー。第一彼女には恋人がいる」
「あ、そうなんだ……」
「ってことで、行こう」
「えっ、わたし行くって言ってない」
「どうせひとりでしょ?」
ぐいっと手を引かれて今戻ってきた道を歩き出す。
悠真はわたしが今ひとり暮らしなのを知っているんだ。
確かにひとりなんだけど……その言葉がずしりとわたしの胸に重く圧し掛かっていた。