思いは記念日にのせて
連れてこられたのは駅前の和風居酒屋。
食事って言ってたのにまさかの飲み屋で一瞬躊躇ったけど悠真は何事もなかったように進んでゆく。
ええい、しょうがない。
サラリーマン風の人だらけで騒がしいのかと思っていたけど意外にも女子会が多いみたいでおしゃれな雰囲気だし、個室の作りになっているから逆に落ち着けるかも。
掘り炬燵状の席の上にある赤い提灯がぼんやりとテーブルを照らしているだけで薄暗い雰囲気を醸し出している。
ふたりなのに四人席に座らされて申し訳ない気がしたけどゆったりと座れていい感じだ。
「飲み物何にする?」
「烏龍茶で」
「ちょっとくらい酒つき合えよ。明日休みだろ」
有無をいわさず烏龍茶はウーロンハイにされ、悠真が適当に注文していくのを唖然として見てしまっていた。
そんなに食べられるのって思うくらいの怒濤の注文。
わたしそんなに入らないからねって言っても「平気平気」と手を緩めない。
「再会にかんぱーい」
生の大ジョッキを大きく掲げてわたしのグラスに若干強く当ててきた。
ビールの泡が散るんじゃないかと思うくらい。手加減してほしいなあもう。