思いは記念日にのせて
「キスの日? なんじゃそら?」
「だーかーらぁ、今日はキスの日なんだっつーの。そういう記念日があるの。アニバーサリー、わかるぅ?」
最初は向かい合わせに座っていたはずなのにいつの間にかわたしは悠真の隣に座って肩を組んでいた。
いい感じに酔っぱらってしまっていて悠真の頬は最初より赤い。きっとわたしはもっと赤いだろう。
すでに頼んだ食べ物はほとんどなくなっていて酒のつまみ程度の枝豆や野菜スティックなどの軽いものしか残っていない。
「くっだらない」
「なっ」
「そんな日じゃないとできないもんじゃないだろ。あっちじゃ小学生でもやってることだし挨拶程度のもんだろ」
カラカラと笑い声をあげる悠真にむっとして唇をとがらせるとそれを上下にむにゅっと摘まれた。
「っ!」
「かーわいい。アヒルみたい」
「んもう! ばかにして。じゃあなによ、悠真は向こうで美人の女の子としてたわけ?」
「当たり前だろ」
ふっと余裕たっぷりに笑う悠真にドキッと胸が高鳴る。
急に大人っぽい雰囲気を醸し出すから……まあもういい大人なんですが、お互いに。
「練習してみる?」