思いは記念日にのせて
恋人いるのにって言っても、挨拶だって言われれば意識している自分が恥ずかしい気もするし、負けた感じもする。
そう、これは挨拶。ただの挨拶なんだ。
意を決して悠真の形のいい唇に自分のを一瞬だけ重ね合わせる。
うわ、思ったより柔らかくてびっくりした。
「……」
やりきったという達成感でいっぱいになったわたし。
だけど目の前の悠真は不満そうに据わった目をしているのは気のせいじゃないはず。
「挨拶もまともにできないのかよ」
「ふぇっ?」
「しょうがない。手本見せてやるよ」
手本?
そう思った時にはすでに遅く、悠真の手がわたしの首筋に伸びてきてしっかりうなじを固定されていた。
「まっ」
――待って、という言葉は悠真の舌によって遮られる。
温かく濡れた舌がわたしの唇を下から上になぞるように舐め、びくっと身体が震えた。
そして息をつくまもなく、悠真の柔らかい唇が押し当てられる。
「っ!」
驚きのあまり、思い切り鼻から息を吸い込んでしまっていた。