思いは記念日にのせて
そんな余裕のないわたしを見て、軽く鼻で笑う悠真。
続けざまにわたしの下唇を味わうように食む。
どうしたらいいかわからず目を見開いたまま喉元でひきつれるような声をあげるわたしを悠真は逃がしてくれない。
重ねられた唇が熱い。
息、できない。
苦しさのあまり悠真の両肩に手をおいて押しやろうと必死でもがくと唇が少しだけ離れた。
ほっとしたのもつかの間。
「鼻で息しろって」
唇同士が触れあう位置でそう囁かれ、びくんと全身で反応してしまう。
そんなこと恥ずかしくてできない! 鼻息かかっちゃうもん!
酸欠のあまりに頭の中がパニック寸前のわたしは口を開けて息を吸ってしまっていた。
それがいけなかったのかもしれない。
その隙間を縫って悠真の舌がわたしの口腔内に滑り込んできたのだ。
「っん!」
抗議の声が飲み込まれる。
ぬるりとしたその肉厚の舌がわたしの口の中に入っているのにも仰天したけど、軟らかく上顎を舐められ背筋がぞくっとした。
喉の奥の方に逃げていたわたしの舌を絡め取るようにして優しくなぞりあげられ、自分のものじゃないような鼻から抜ける甘い声を漏らしてしまう。
「っふ、んっ」
悠真の両肩をぎゅっと掴んでなんとかやり過ごそうとしてもできなかった。
だって悠真の舌は甘くてどこに触れても気持ちがいいんだもん。
なぜかじわりと浮きあがる涙が目元を濡らしていることに気づいた時、悠真の唇が離れていった。