思いは記念日にのせて
 
 告白された日からキスの日までに何回かしてくれてはいた。
 だけど今までのように軽く触れるものとは全く違う。
 左右の口角を食むようにしてやや強引に唇を割り開かれ、苦しくなったわたしは抱きしめられている貴文さんの腕にしがみついていた。

「んっ、ん――」

 熱くて柔らかい舌が口腔内に入り込んできて、まるで蹂躙されているみたいだった。
 普段穏やかな貴文さんからは想像できない荒々しさに息をつくことすらできない。
 あの日の悠真とキスとは全然違う。
 なんで今あの時のことを思い出すんだろう……比較するみたいでいやだ。

 消えろ、悠真のことなんて頭から消えちゃえ!
 かき消すように貴文さんのキスに集中しようとするけど息が続かない。

「たかっ、んっ」
「先に……千晴がほしい」

 わずかに唇が離れた瞬間にそう囁いた貴文さんの目は欲情の色に染まっているように見えた。
 その色香に皮膚が粟立つ。
 こんなにもわたしを求めてくれるなんて思ってもみなかったから。

 緊張と不安が入り混じる中、小さくうなずくとそっと身体が解放された。
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