思いは記念日にのせて
いやな予感しかしなかった。
ブラウスの前だけはだけさせたまま、タイトスカートを持ち上げて下着を確認する。
「――あ」
予感的中。
こんな時に当たってほしくなかった……。
「あれ、早い」
「ごめんなさい。貴文さん」
がっくりと肩を落として生理が来てしまったことを伝えると貴文さんの表情がわずかに曇った。
やっぱりな反応に申し訳なくて涙が出そうになる。
だけど泣いてもどうにもならない。ぐっと堪えて頭を下げようとしたのを貴文さんが止めた。
「気にしなくていいよ。残念だけど今日だけじゃないし」
「でも、記念日を大事にって言ってくれたのに……」
「いいんだって。でも最近ずっと触れられなくて欲求不満だったから、抱きしめて寝てもいい?」
さっきより優しく抱き寄せられてうれしさがこみ上げてくる。
わたしここにいてもいいんだ。
そっと貴文さんの背中に手を回してワイシャツをぎゅうっと握りしめる。
「うん……大好き」
「よかった」
貴文さんの身体から力が抜け、大きく吐き出した安堵のため息がわたしの髪を揺らした。
その日の夜は貴文さんのベッドでふたりくっついて横になった。
最初はドキドキしていたけどすぐに貴文さんの匂いがついた布団に馴染んでしまい、吸い込まれるように眠りにつくことができたんだ。
――幸せ。