思いは記念日にのせて
第二十二話
その翌週、貴文さんは出張に飛んでいった。
奇しくもその日はアンケートボックス開封日だった。
出勤してそうそう片山課長が『朝から人事部に呼ばれた』とぼやいている。
人事部長苦手なんだよなとがっくり肩を落として。
「じゃ、わたしひとりで開封しますよ」
「大丈夫? じゃあお願いしようかな」
ここ数週は脅迫めいたものも入っていなかったのでわたしも片山課長も安心しきっていた。
そしていざ開封してみる、と。
「……これ」
たくさんの白いアンケート用紙の中に、ひときわ目立つピンク色の紙。
こんな色の紙は初めてだった。
おそるおそる開いてみる。
写真が一枚、無造作に挟まれていた。
それは裏側を向いていて、何が写っているかはわからない。
「もぅ、なんなのよ」
意を決して机の上に置いた写真をひっくり返すと、それは貴文さんと秘書課の西園寺さんが暗い夜道を親しげに寄り添って歩いている画像だった。
「あ、れ?」
その写真には日付がついている。
前回みたいに手書きで記入されたものではなく写真自体に印字されているもの。
そして、いつものようにそこには手書きで【霜田貴文と別れろ】と書かれていた。
「この日って……」
貴文さんと夢幻亭で食事をしていたあの日だった。