思いは記念日にのせて
――ちょっと社に戻らなきゃいけなくなった――
貴文さんの言葉を思い出して、背筋がざわりとする。
あの日は仕事を終えた後、一緒に社を出たからその前のことではないはず。
斜め横から撮影されているこの画像から貴文さんと西園寺さんがとても楽しそうな表情をしているのがわかる。
悔しいけどよく撮れていた。
前回送り付けられた画像とは質が全く違う。
日付や時間を印字して表示したり、前回の人とは違ってこういう画像をプリントアウトするのに慣れている人のようにしか思えない。
そう考えたらわたしが悠真や貴文さんと写っている画像を送ってきた人とは違うのだろう。
キスの日にふたりが仲良さそうに歩いているのを見たのも少しだけショックだった。
だけど同期会に向かう途中だろうと勝手に自己完結していた。
その時のことを貴文さんに聞くのもはばかれられた。
だって会えないって言われたのにわざわざ職場まで行っただなんてバレたら呆れられそうで怖かったから。
そしてこの画像。
この画像を片山課長に見せたら貴文さんのイメージが悪くなってしまうかもしれない。
大学の先輩後輩なのに、こんなことで気まずくなってしまったら……。
申し訳ないと思いながら、わたしは再びその写真を制服のポケットの中にねじ込んでいた。
気にならないと言ったら嘘になる。
こんなふうにお似合いのふたりを見せられて気にならないわけがない。
だけど貴文さんに真相を聞くにはこの投書のことを話さなければならなくなる。
そして今、彼の仕事を邪魔をするわけにはいかないし、かといって帰って来てから聞くのもいやだ。
これで動揺して貴文さんを責めるのは犯人の思うつぼになりそうで。
仕事を終えた後に西園寺さんとたまたま一緒になったのかもしれない。
そう言い聞かせるようにして、画像とともに胸の奥に押し込めることに決めたんだ。