思いは記念日にのせて
その日の帰り。
正門から副社長を見送る西園寺さんの姿を見かけた。
肩に掛かるくらいのさらさら黒髪のサイドを派手すぎないバレッタで留め、頭を下げる時に顔にかからないようにしているのだろう。
そして制服の着こなし。同じものを着ているのになんだかとってもおしゃれ。
スタイルも抜群で身長もすらっと高い。
足も細くて長い。わずかに高さのあるヒールが足首の細さを強調しているように見える。
「西園寺さん、相変わらず綺麗だな」
同じく通用門から出てわたしの前を歩いていた男性社員がうっとりとした視線で西園寺さんを見つめている。
もちろんその人と一緒に歩いている男性社員も。目がハートになってそう。
「性格もめっちゃいいらしいよ。知り合いが書類落とした時さっと近づいてきて拾ってくれたとか」
……それ、普通にやらない?
さっと近づくかどうかは別として。
それを美人秘書がやるか一般社員がやるかによるのかと思ったらつい大きなため息が出てしまう。
それが大きかったのか、前を歩いていた男性社員たちと西園寺さんがこっちを見ていた。
まずい、と思ったけど西園寺さんは一瞬目を丸くした後、にこっと微笑んで正門から社内に戻って行ってしまった。
「悩殺スマイル。今こっちに向かって笑ったよな」
前を歩く勘違い社員たちはテンションが上がったようでスキップを踏むような軽い足取り。
でも本当にとっても美しい笑顔だった。
アメリーといい勝負かもって思うくらい。
でも、気のせいじゃなかったら西園寺さんはわたしに笑いかけたように見えた。
それも挑発とかではなく、自然な感じで。
もしかしたら貴文さんとわたしのことを知っているのかもと思ったけど、決めつけるのはよくないよね。
わたしより西園寺さんのほうが貴文さんの隣が似合っている。
あの写真、どうしたらいいのだろうか。