思いは記念日にのせて
5.心穏やかな時間
第二十三話
「あれ、千晴」
地元の駅前で悠真と会った。
ちょっと化粧の濃い女性ふたりを侍らせているように見える、というかそうとしか見えない。
なんとなくその人たちに睨まれているような気がして頬がひきつってしまった。
「帰るの?」
「う……うん」
「一緒に帰ろうぜ。じゃ、またな」
女性たちに軽く別れの挨拶をする悠真に不満げな声が聞こえた。
カラオケに誘っているみたいだけど悠真は『またの機会に』と素っ気なく言ってわたしを追いかけてくる。
いやいやいや、行けばいいのに。
競歩をしているんじゃないかと思うくらい早足になるけど、足の長い悠真にあっという間に追いつかれてしまう。
「今日帰り早くない? メシは?」
「いっ、いつもと同じだよ」
並んで歩きたくなくて速度を緩めると悠真も同じようにゆったりと歩き始めた。
先に行きなさいよー!
心の中で叫んでも聞こえるわけがない。
どこで誰が見ているかわからないし、また写真でも撮られようものならやっかいだ。